2020年1月29日水曜日

工事進行基準廃止!

“ 2021年4月以降開始の会計年度から工事進行基準廃止(強制適用) ” 大規模なシステムを請負開発している会社(の経理部)さん大変です。いまからソフトランディングできるよう調整かけていると思います。今回はシステム開発、プロジェクト管理を会計、原価管理面から触れたいと思います。


そもそもですがシステム開発の進捗って、計量可能でしょうかね?計量可能だとしたら尺度、単位は何でしょうか?禅問答のようですが、これがシステム開発の進捗把握を困難にしている要因の一つです。答えは工数なのですが、その工数が曲者で、意味ある仕事をした時間、生産的にソフトウェアを生産(設計、開発)した時間です。その中には顧客打ち合わせ、設計書などの資料作成も含まれます。これらが原価計算でいうところの直接労務費になります。他の業界では間接費にあたるものが、ソフトウェアの場合、直接費であり原価のほぼすべてを占めます。ベテランと新人では生産性は桁違いです(もちろん仕事の質、役割の違いもあります)。ベテランといえどもお客様やチームメンバーとのコミュニケーションに難があるとパフォーマンスが落ちます。要員をアサインしていれば工数は日に日に増えていきますが、その通りに進捗している訳ではありません。予定工数(予定原価)実績工数(実際原価)の乖離が広がるだけです。予定工数の信頼性が失われた時点で、もはや工数進捗計量の用をなさなくなります。いわゆる炎上です。

経理部の人が聞いたら驚かれるかもしれませんが、経験あるリーダー(プログラマーからのたたき上げ)は、投入工数をあてにしていません。毎週のソースレビューや小規模な動作試験の結果で完成度をざっくり評価しています。機能単位・難易度別に未着手(0%)、着手(10%)、仕掛中(20-60%)、完成検査待ち(70-80%)、検査終了(90%)のようなステータスを置いています。あたかも建物のような構造物のごとく、システムの仕上り具合を目視しています。感覚的に評価することもありますが、メンバーの顔を見ながら話しをしているので、そんなに外れません。ソースレビューはメンバーの実力や弱点が良くわかります。支援のポイントもわかります。その点でもプロジェクトを推進するのにプラスです。
ただし手間がかかりますし、たたき上げのリーダーでなければこのスタイルはとれません。リーダーの仕事、それだけではないですからね、大変です。ですがシステムの品質は確実に向上します。

スクラッチ開発からパッケージソフト導入に時代は変わりました。手間のかけどころも変わったと思います。工事進行基準は廃止していいと思います。こんなことまでやれというのは酷です。完成基準で、受入検査合格、不合格でいいのではないでしょうか。

ただ事業の命運を握るようなシステムは工数で進捗把握をしないでください。目利きをいれて実際の進捗把握を行いつつ、高い品質のシステムを作ってください。

永島志津夫

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2020年1月28日火曜日

失敗できないプロジェクト 〈成功の秘訣〉

システムプロジェクト成功のポイントは要件定義にあります。では要件定義の成功のポイントは? プロジェクト開始前の事前ヒアリングです。規模の大小、期間の長短問わず、1,2回の事前ヒアリングの有無が、プロジェクトの運命を決めます。全体の費用対効果、QCDを大きく左右します。


事前ヒアリング ” 、うちでもやっているよ、と思われるでしょう。それがプロジェクト成功のポイントになるのか?

事前ヒアリング断片的な情報から、必要とされるもの・ことを具体的に想像して、仮説レベルの全体像をイメージ。要件定義の限られた時間で、検討すべき課題を具体化し、キーメンバーのアサインを決める。

これが、事前ヒアリングからのアウトプットです。

要件定義の重要検討テーマ、セッション・スケジュール、そして仮説レベルですがシステムの全体像、おおまかなデータモデルまでイメージします。要件定義はその仮説検証となります。一般的には要件定義フェーズの計画書ですが、この段階で高い品質を目指し、ゴールに近づいています。

成功しますよね。だから事前ヒアリングが重要です。仮説作りです。

プロジェクトリーダには業務知識、システム設計経験もですが、コミュニケーション能力、ドキュメンテーション能力が重要です。仮説作りは、インプットからロジカルにアウトプットするという思考法ではありません。課題解決型の非日常的思考法です。プロジェクトの初期段階はお客様、ベンダー共にお互いのことが分かっていない、情報不足した状態ですから、仮説作りの思考法が効果的です。

事前ヒアリングもう一つの利点はベンダーの実力が、早い段階でお客様にはっきり分かることです。不幸にも実力のないベンダーを選んでしまったら、お客様側がそれに合わせるしかありません。
初めて要件定義をするリーダーがアサインされているかもしれません。業界、業務知識ゼロかもしれません。お金を払っているのはお客様。でも、ほとんどお客様がベンダーに仕事を教えて、チグハグなドキュメントをもらって、真っ赤になるほど赤入れをしているかもしれません(アジャイルとかスプリントがどうとか言って、ドキュメントを出さないベンダーもいるかもしれません)。事情はともかく、あいみつ(相見積もり)なり、コンペなりをして、事情了解の上で、契約、注文書を発行してしまったのですから、元には戻れません。

泣くのはお客様側、特に業務の現場のみなさんです。こうならないように、事前ヒアリングでベンダーの実力をみてください。コミュニケーション能力、ドキュメンテーション能力も伺い知ることができるでしょう。人柄、第一印象も重要です。そういう相談の仕方、提案依頼をしてみてください。
永島志津夫

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2020年1月27日月曜日

システムの費用対効果 〈Python AI ニューラルネット - MNIST その3〉


中間層7セルのニューラルネットで MNIST 認識率 96% まで来ました。前処理に左右 22.5° の回転を入れたのですが、これが効きました(前回はこちら)。


種明かしです。MNISTの画像を見ていたら、左右上下のブレよりも回転のブレのほうが目立っていたのです。45°まで回転させると別物になってしまうのでその半分にしました。トレーニングデータを左右22.5度ずつインフレートさせる考え方もあるのですが、トレーニングデータにならなくなること(悪筆化)を考えて、テスト時に0°、左22.5°、右22.5°で結果を出し、どれか正解があれば良しとしました。

プリミティブな仮説検証でしたが、この路線で進むのであれば、トレーニングデータを精製し、テスト時によりバリエーションの多い前処理を行い正解を探すことになるでしょう。さらに次の段階となると、コンテキスト、前後関係から正解候補のバイアスをかけることになります。構造化された知識情報システムの一部、一次情報の認識エンジンとしてのニューラルネットという扱いです。実用性も高く、仕組みとしても面白そうですね・・・と、ここまで書いて昔の記憶が蘇ります。お気づきの方もいるかもしれません。第五世代コンピュータ、30年前のニューラルネット・ブームもここで壁にぶつかりました。一次情報の分節化、知識表現と記憶、推論、仮説など、ここからが本当のAIです。実用化までに必要な費用、時間は桁違いと見てください。1年、2年ではありません。¥1億、¥2億でもありません。
永島志津夫

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システムの費用対効果 〈研修による能力向上、人材開発〉

忘れられがちですが、人材開発は最も効果的なQCD向上策です。適切な研修や職場教育(OJT)は費用対効果を何倍にも高めます。2年前の新卒者研修で行った内容をご紹介します。*


15名の新卒者を対象に初期導入教育を実施しました。昨年の反省を踏まえ今年は一人一人に集中力を求める強化プログラムに変更しました。メモをとらずに30分ヒアリングをする。人の話を頭に焼き付ける。そのために集中力を発揮する、昨年との違いは“集中力”、この一点です。


高専卒から大学院卒まで年齢は5歳くらいの幅がありましたが、結論から言えば、集中力、ヒアリング能力に年齢、理科・文科など専攻の影響は見受けられませんでした。採用プロセスで一定の基準をクリアしているからでしょうか。ただ意外なことがわかりました。今回はそのこともお話しします。

研修の内容は、模擬的に顧客へのヒアリングを実施し、問題分析、改善提案を行うというものです。ヒアリングでは私が一人二役で上司役と顧客役を演じ分けました。15名の新卒者はスタッフとして、個々に上司と顧客にヒアリングするという設定になっています。上司とスタッフのペアが15組あるかのようなイメージですね。また問題を分析、改善提案をスライドにまとめていく過程では私が上司役としてレビューを実施しました。

お客様はアパレル企業、人事部さんとの打ち合わせでヒアリングをするという設定です。副業採用を本格化するとのことで、既に導入済みの正社員採用の電子りん議を手直しするというものです(※フィクションです。念のため)。検討されている副業のあらまし、採用りん議として考慮すべきことなどをヒアリングします。実際のヒアリングは20分になりました。60分かけてヒアリング内容を議事録にします(実際の仕事でも慣れないうちは議事録作成にヒアリング時間の3倍かかるというのが相場です)。

副業を取り上げたのには理由があります。技術系、営業系と大きく配属先の目処はあるとはいえ総合職は辞令一つで明日から何屋さんにでもなるというものです。だからといって主体性を無くしては何屋、何者にもなれません。仕事(賃労働)とは自分の職務能力を売ることであり、会社に来て漫然と時間を過ごすことではない、そのことを意識する材料として、副業=得意とする職務能力を売る、働き方を題材としました。

お話の内容です。

“販売員、デザイナー、EC系ITなど専門職について副業採用を考えている。販売員であれば週末の忙しいタイミングで働いてもらう。平日・週末の繁忙の波はもちろんだが、ファッション通の個人の力に期待する面もある。自分のブログでコーディネートを発信、街中での動画も活用し表現力豊か、プロ顔負けのものもある。固定ファンも持っている人も多いようだ。自社のブランド、自分の世代に閉じることなく、幅広く素養を得て、お客様との交流経験を積むことがこれからの販売スタッフには必要だ。正社員にも良い刺激になるはずである。デザインも仕事の波があり必要な時に仕事を出したい。クリエイターにとり仕事がないのに会社に来ることほど苦痛なことはないらしい。逆に自分がしたいと思っていたチャレンジングな仕事というのは、いくら忙しくてもイキイキしていられるらしい。もちろん、その方がデザイナーにも相当良い収入になる。EC系ITは他社での経験、ノウハウを期待している。例えば、おすすめ商品、いいねリスト、購買履歴など、表には出てこないところでレスポンスを高める設計上の工夫があるらしい。利便性とのトレードオフをクラウド基盤の特性を踏まえ実装、ECサイトを成功させている人材の手を間借りしたい。

もう一点、採用後2年間に掛ける育成コストを採用りん議の段階で想定しておきたい。人件費(給与、賞与、社会保険、福利厚生)、エージェント経由の場合のコミッションなどの直接費に、育成コスト加えたトータルで勘案したいという要望が経営から出されている。人手不足を背景に十分な能力を持たない人材を無理に採用しアンマッチが起きている。早期退職ではコミッション分も回収できていないので、育成コストという項目で現状の能力を意識させ、無理な採用に一定の抑止をかけたい。”

他、選考、採用りん議のプロセスに関連した内容が続くのですが、それは割愛します。

ヒアリングを前編と後編に分けて、計2回行う予定だったのですが、結果的に前編を1回追加し計3回実施しました。最初のヒアリングの出来があまりに悪かったからです。出来が悪かったというのは全員ではありません。出来た人と出来なかった人の差が甚だ大きく出ました。今回わかったことの一つは、このヒアリング能力と問題分析能力の相関です。問題分析、改善提案の最終的な出来はほぼ最初のヒアリングの出来に連動しました。同じヒアリングを2度実施し、提出してもらった議事録を見る限り個人間の差は縮まっていたのですが、結論から言えば前編を2回実施せずとも最終的な結果に差はありませんでした。これは怖い結果です。一見簡単なタスク、30分ほど人の話を聴くことが、問題分析、改善提案といった高度なアウトプットに連動するのです。出来の良い人ははただ聴いているだけではない、問題分析、改善提案につながる ”何か” が違うのです。そもそも、人の話を聴くというベーシックな知的好奇心があるか、ないか、その違いではないかと私は見ています。モチベーションなくして認知・行動はありませんから。



例えば採用試験にヒアリングを導入すれば良いスクリーニングになるでしょう。話の要点が議事にあるかチェックするだけです。難しい質問を用意する必要もありません、簡単なことです。また面接を何度もするくらいなら、ヒアリングに続き問題分析の宿題を出しても良いでしょう。あまり手間のかかる宿題を出せば他の企業に流れるかもしれませんが、問題解決に興味のない人間、問題分析を億劫がる人間を雇用し続けることになるくらいなら他に行ってもらった方が良いとも言えます。単純労働は早晩機械に取って代わられますから。

※求職者側の意見ですが、就職活動をしていた頃、形式的に続く部長面談、役員面談に辟易しました。何の意味があるのでしょう、同じような質問ばかりで。これはこれで求職者側の企業見極めになりましたが。



知識教養がないのも考えものです。あまりに論理性がないのも困ります。しかし仕事の現場に書かれた文章が用意されているでしょうか?顧客の要望、要件が文章として既に存在しているのでしょうか? face to face のコミュニケーションで徐々に要望、要件が具体的になり、”である・ではない” という問い掛けから、あいまいさが排除され、よりクリアになっていく。“こんなケースはどうでしょうか?” という自分にはない相手の発想から、より発展されたアイデアが作られていく、そのような創造のプロセスにこそ機械に代替されない人間らしい労働の価値があります。



顧客とのコミュニケーションには甘えが許されません。重電メーカの総合研究所にいた時、NTT出身の所長がレビューや面談で “技術者の独善性” という言葉を何度も使っていたことを覚えています。当時、私はその言葉の実感がありませんでしたが、20代の最後、顧客相手の仕事に復帰した時、責任も重く、コミュニケーションに緊張しましたが、何よりも “技術者の独善性” を思い知ることができました。専門性を盾に社内では好きな事を言えます。言いっ放しができます。その気がなければ人の話に耳を傾ける必要もありません、あえて不都合、不愉快なフィードバックをする人もいないでしょう。そんなことは組織において損なことですから。しかし、顧客には筋の通らないことは言えません。言い訳もできません。“技術者の独善性” は顧客に接し、フィードバックを直接受け、“痛い目” にあうことで初めて気付くのです。

ですから、今ヒアリングの出来が悪かったとしても悲観することはありません。母国語の話を30分聴き取る、こんなことすら自分は出来ないということを入社した4月の段階で認識できたことは有益です。4、5年後の異動で気付いたとして、どうしろというのでしょう。

永島志津夫

* 当時別のブログにあげた記事を再掲しました


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2020年1月26日日曜日

データサイエンスの実際 インフルエンザ治療薬の審査承認

今回はシステムから離れて、インフルエンザ治療薬 イナビル の審査承認を例にデータサイエンスの実際に触れたいと思います。


2020年1月現在都内で流行しているインフルエンザは10年前に流行して問題となったA型 のH1N1pdm09です(東京都感染症情報センター)、予防接種もこの型をターゲットに製造されたので効果は高かったと思われますが、インフルエンザに罹った小児科の患者さんにお話を聞くと9割以上の方が予防接種をしていました。*

インフルエンザワクチンは感染(ウィルスの細胞内への侵入と増殖、拡散)を完全に防止することはできません。感染が成立すると24時間以内に発熱などの症状が表れる発病の段階に移行します。ワクチンによる発病予防効果は6歳以下の乳幼児で20-60%と見られています。「 なんだ、その程度ならわざわざ予約してお金を出して痛い注射をすることもない 」とは考えないでください。ワクチンの真価は 重症化 の予防にあります。インフルエンザが怖いのは肺炎、脳症など、命にかかわる重症化です。では有効なワクチンを接種していなかった乳幼児、高齢者、呼吸器・循環器の疾患をもっていた方はどうしたらよいでしょうか?それがタミフル、イナビルなどのインフルエンザ治療薬です(厚生労働省 インフルエンザ Q&A

前置きが長くなりましたが、以上の予備知識をもとにイナビルの審査報告書を読んでみましょう。イナビルは日本国内ではポピュラーな治療薬ですが、米国では承認されていません。この意外な事実は臨床試験の結果にあります。医薬品医療機器総合機構 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 承認情報 2010年09月10日 審査報告書 がそれです。

1番目のポイントは p67-68です。 p67 「成人におけるインフルエンザ罹病時間の要約統計量」の第三相国際共同試験CS8958-A-J301 を見てください。オセルタミビル(タミフル)と本剤(イナビル20mg、40mg)それぞれの被験者数300名超の比較試験です。効果は同じ程度という結果になっていますが、p68にあるように耐性ウィルスが拡大しタミフルに不利な環境での試験結果です。

2番目のポイントは p72-76 です。p73 「小児および未成年におけるインフルエンザ罹病時間の要約統計量」を見てください。例数は少なくなるのですが、成人に比べイナビルの有効性が高いようにとれます。成人と小児では事情が異なります。p76にあるように罹患経験、免疫能力の違い、また受診・薬剤投与のタイミングの違い(小児は発病の初期段階で受診する)があります。

メインとなるのは成人に対する大規模臨床試験で、効果は既存薬と同程度という結果です。米国はこちらを基準に判断したのでしょう。一方、日本では重症化対策を念頭に、選択肢を増やす判断をとったようです。小児への対応がその判断を後押ししたようにも思えます。

t-検定の結果がそのまま結論にはなりません。データサイエンスはツールです。データサイエンティストの未来は、課題に対する問題意識・関心、洞察にかかっているのではないでしょうか。

インフルエンザの感染の最良の防止策は、感染源に近づかないことです。また上気道の保護、基礎体力の維持も大事です。健康な生活を心掛けましょう。
永島志津夫

* 薬剤師業務もしており 2019/12-2020/1月の聞き取り結果です。

システムの費用対効果 〈Python AI ニューラルネット - MNIST の続き〉

手軽さに気をよくして Python で遊んでいました。中間層わずか 7 セルのニューラルネットでMNISTの手書き数字認識をします(前回)。この1週間で認識率は94%に改善?


実はトリックがあり、出力層第二位を含む正解率です。完璧性を競うのではなく、認識過程、アルゴリズムを探る実験として行ったものです。
慌てていると人間ですら数字を読み間違えます。悪筆だと2だか3だかわからないことがあります。実際のところ、文字画像以外の情報、前後関係、コンテキスト、知識・常識から、 “たぶん2だろうな” などと判断していますね。絞り込み過ぎないことも大事 ー という考え方です。

以前、重電メーカーの総合研究所で音声、波形解析・認識を研究をしていました。実は波形データだけから音素、文字、単語とマッチングしていくことはできません。アナウンサーのような模範的な発声、読み上げであれば別ですが、情報が甚だしく欠落しています。音声の場合、タイムスパンに応じて情報量が拡充するので、単語レベルでAかBという判断であればそこそこいけます。単語Aならこの音素はα、単語Bならβ、どちらにより近いか、というような処理を複数音素に適用し、より近いと判断されるものを認識結果とします。
一次情報で強い絞り込みをかけると誤り訂正の機会が失われるので、まずは緩い絞り込みとして、第一位と第二位のどちらか、上位情報からどちらかに絞るというアルゴリズムです。
“迷い” “わからない” の指標ですが、第一位の出力と第二位の出力の差でもよいでしょう。
出力層第一位セルと第二位セルの平均値を正解時と誤答時で出してみました。

中間層セル数 7 の場合
    正解  誤り
第一位 0.90  0.61
第二位 0.13  0.20

正解時の第一位と第二位の差は 0.77 誤答時は 0.41 です。結果からみると比較的大きな差が出ました。中間層のセル数が 50 でも同様の結果でした。音声認識でも同じような検証を以前にやったことがありますが、これほどの差はつかなかったと記憶しています。

中間層セル数 50 の場合
    正解  誤り
第一位 0.94  0.63
第二位 0.12  0.21


AI/データエンジニアのみなさんは、1%でも認識率を上げようと、中間層の段数を増やし、セル数を増やし、前処理も工夫するなどの苦労をされていると思います。しかし、あえて絞り込みを緩めて、“迷い” 指標を後段処理に送ることも改善の一助になるかもしれません。
永島志津夫

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2020年1月13日月曜日

システムの費用対効果 〈 RFP 提案依頼 〉

RFP ( Request For Proposal ) 提案依頼 という 仕事の依頼の仕方があります。背景、前提、希望などを伝えたうえで、“良い提案をして下さい” というものです。システムやプロジェクトという無体物を相手に何と大胆なことでしょう。


この世界で仕事を始めた頃、そう思いました。安い予算ではないのです。大きな仕事程、この RFP を使います。RFI ( Request For Information ) 情報提供依頼というのもありますが、ほとんど同じようなものです。要件が定まる・定める前段階で、望ましいゴール、そのためのプロジェクトの概要をシステムベンダーに考えてと依頼を出すのですね。契約に基づく依頼ではないので応じる義務はありませんが、大きな仕事や、取れそうな仕事とみると、それなりに手間ひまかけて、提案書を作ったり、プロトタイプまで用意したりすることもあります。当て馬とみると簡単に済ませます。なので、あいみつ(相見積もり)と同じで、前提が揃いません。結局は予算に収まるとか、価格の安いところに出すという判断になります。無体物ですから、本当は値段以前に必要なもの、ことが足りているかが大事です。

もうお分かりだと思います。問題が露呈するのは最終段階、移行のところです。 “ それはお客様でやって頂きます。 ”  これが決まり文句です。他社が導入しているからといって安心は禁物です。新システムへのログインのタイミングが少しずれただけで移行に失敗することもあります。ユーザーにアナウンスしたつもりでも、ちょっとした隙にトランザクションロス、マスターロスが入り込みます。今はもうないと思いますが、オンプレのADから365のADへの移行でエライ目に遭ったことがあります。移行は準備も含め、時間もお金もかかります。経験も必要です。ここを端折れば当然安くなります。

安易なRFP止めましょう。安いところ選ぶのお待ちください。移行に不安はありませんか?
永島志津夫

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2020年1月12日日曜日

システムの投資対効果 〈 Python AI ニューラルネット 〉

Python 使いやすいです。この簡単さ、何かに似ていると思いました。そう、BASIC* です。インタープリタだし、宣言しなくていいし。それでいて配列計算をスカラーのように記述できます。SASもそうですが、データアナリストは1命令でデータセットの処理記述ができる言語が好みです。ビギナーからプロまで遊ぶように使える素晴らしい環境ですね。


面白くなって少し遊びました。おなじみ「ゼロから作るDeep Learning」  ( 教材はGithub )。 でもあえて Deep とは反対の事を試しました。二層のニューラルネットで手書き文字認識( MNIST  0から9の数字 ) を学習させるのですが、中間層をどんどん落としていきます。タイトルの通り、費用対効果を見るというトライアルです。

結果です。
中間層 認識率(テストデータ)
 50 unit 94.6 %
 25 unit 94.1 %
 15 unit 93.3 %
 10 unit 92.1 %
   7 unit 91.3 %
   5 unit 87.3 %

中間層が 7 でも認識率が 90 %越えるのですよ。どうなっているのでしょうか?おそらく 0 から 9 のどれか 1つに分類するというタスクであれば、特徴量は 10 も必要ないということではないかと推察しました。7 程度の特徴量の組み合わせで まあまあの認識ができると。こんなことから CNN に発展したのかもしれませんね。
多ければいいというものではない、少ない程必要なものに迫っている、何だか要件定義と同じですね。機能やデータを絞って迷わず使いやすくするのがデザインのポイント、性能も上がりますし。だいたいロジカルじゃないことはシステム実装できませんから。思い切ってシンプルにそぎ落とすのが肝心です。
永島志津夫

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* パソコンのコンピュータ言語といえば BASIC という時代がありました。1980年代です。

2020年1月6日月曜日

システムの投資対効果 〈 データサイエンス AI 〉

データサイエンス、AI(BIも)、普通に使われる言葉になっていますね。8年程前、SASさんとセミナーさせて頂いていた頃、データ分析・統計解析の本が書店のベストセラーになっていたことがあって、それなのに、ちっとも営業の引き合い増えないね、などと言っていました。しかし今や、ITと言えばAIみたいな時代になってしまいました。


自動運転もそうですが、将棋に加え囲碁でもコンピュータが人間に勝つというニュースはインパクト大きかったですね。また誰でも手軽に試せることも人気を後押ししています。手元のPCでもGoogleクラウド(GCE)とかでも、すぐに試せます。
大学で、脳の記憶・認知の仕組みを研究していたこともあって(ほんの入り口ですが)、最近のブームは、以前のように一時的なもので終わるのか、ますます発展していくものなのか気にはなっていました。

ようやく最近になって、 ニューラルネットワークと深層学習 読みました。面白いですね。基礎から順を追って最近の発展まで持ってきてくれているので分かりやすいですね。なるほど、大きいところでは昔と変わっていません。最近のブームは多層神経回路の逆伝播学習を加速するコスト関数が発展のキーだったということで、納得です。まだまだ試しみるべき工夫、アイデアは尽きていないようです。発展の余地あり、安心しました。

さてニューラルネットの発展は待つことが出来ますが、目の前の経営課題は解決を急いでいます。発注予測があたらず、品切れと残在庫のまだら模様が相変わらずだったりします(だいたい忙しい中、間違いなく発注するほうが難しくて、誤発注もあったりします)。AI君たちがてきぱきさばいてくれたらと思いますよね。業務の自動運転!
まずは地味ですが情報分析系、マスター整備、自動データ収集&クレンジングからでしょうか。自動発注のAPI,Webサービスも整備しておけばタイムリーに実用検証できますね。
永島志津夫

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※私はCが母語なのですが、遅ればせながらPythonをキャッチアップしています。

2020年1月5日日曜日

システムの費用対効果 〈 仮説 〉

仮説 - 大きなテーマです。仮説なき行動、時には必要かもしれませんが、仮説なり道筋があるに越したことはありません。納期、予算が決まっているプロジェクトであればなおさらです。


仮説を暫定的な成果イメージと言い換えてもいいかもしれません。全くの白地から挑戦するよりは、下書きが欲しい。それに沿って、というより、その仮説の妥当性を検証するという進め方だと、調べること、考えることのポイントをおさえることができます。仮説は修正されますが、それでも場当たり的に手を動かすような無駄はありません。いい仮説をプロジェクトの初期、もしくは開始前にイメージできるかどうか、プロジェクトリーダーの経験と力量に掛かっています。(データサイエンスも同じで、ゼロからマイニングができたら儲けものですが、実際は現場やお客様の声のから閃いた直感を仮説検証して新しい取り組みにすることがほとんどです)

フューチャーアーキテクト(当時はフューチャーシステムコンサルティング)にいた頃、調査、計画立案というプロジェクトフェーズでは最初の2週で成果イメージ、仮説ができていなければアウトでした。毎週の検討会でお客様と話しができなくなります。初めはインプット大、アウトプット小で許されますが、1、2回で終わりですから。
大変ですけど仮説とかストーリーができていると、あとが楽なのですよね。次のフェーズの準備もできるので費用対効果も向上します。

仮説作りの段階から参加させてください!
永島志津夫

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システムの費用対効果 〈 スコープ定義 〉

PMBOKではスコープ、システム化の範囲、対象とするもの・対象としないものですね。関係者の合意形成、納得感が大事、ここがしっかりしていると大体プロジェクトはうまくいきます。


ところが、苦手なこと、できないこと、都合の悪いこと、言ってくれません、システムサイドもユーザーサイドも。それでは問題になることが明白なのでベテランははっきり言います。 “EXCELよりも不便になります” とか、 システムって賢くありません、 人がやるのが一番いいです。” とか。

一方、断片的な情報から必要な書類を探し出す検索性や、ネットワークさえあればいつでも、どこでも必要な情報にアクセスして、業務を遂行できるのは大きなメリットです。加えてセキュリティーが強化され、紛失リスクが軽減されることも企業として重要です。結果、会社組織全体で業務改善、費用対効果に見合うと判断できればGOです。
繰り返しますが、EXCELより不便になります。罫線一杯の凝った帳票・印刷様式、入力規則を駆使したフォーム、マクロ、要注意です。苦手なことやろうとしたら、お金も時間も性能も犠牲になりシステム化する意味、メリットなくなります。クラウド、ウェッブの特性に合わせフォームとデータ構造をシンプル化してしまいます。条件判断もできるだけ入れません。別口で対応します。 ”EXCELもよかったんだけど、クラウドもこれはこれでありかな。” と現場レベルで言ってもらえれば合格です。

スコープ定義、大丈夫でしょうか?都合のいい勘違いのまま進んでいないでしょうか?
仕切り直しは早いほうがいいです。
永島志津夫

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