2020年4月16日木曜日

湿度75% が 飛沫感染の予防目標か?

時節柄、今回も予防衛生の話題からです。感染という言葉を聞かない日がないくらいですが、ウィルス感染の前段階に “吸着” というプロセスがあります。吸着とは宿主細胞表面にウィルスが安定的に密着した状態です。ウィルスは宿主細胞に自力でたどり着くすべがないので、宿主細胞表面に密着できるかどうかは偶然です。健康な粘膜表面は粘液で覆われているので、ウィルススケールでは三次元の障壁となります。粘膜・粘液保護の弱い部位にウィルスが付着することが吸着を有利にします。吸着できなければ細胞内への 侵入(≒感染)プロセスには進めません。タイトルの通り、湿度75%以上が飛沫感染の予防目標ではないか、というお話(仮説です)。



生まれてから死ぬまでの全ての間、生物は常に微生物、病原体にさらされていますが、免疫システムがバランスを取りながら病原体から身を守っています。免疫システムの複雑さは神経系に例えられるほどで、人間が90年前後生きられるのはこの免疫システムに負うところが大です。過労・睡眠不足は要注意ですが、普段の健康状態に問題がなければ、心配することはないでしょう。心配の精神ストレスの方が考えものです。

予防衛生の一つ、飛沫感染対策です。「インフルエンザってそんなに怖いの?」?の38ページをごらんください。鼻、のど、気管支、肺への付着率と粒子径の関係を調べたものです。大きな飛沫は鼻には付着しますが、肺にはほとんど届きません。粒子が小さくなる程、肺への付着率が上がります。また肺の場合は鼻(鼻腔)よりもはるかに少ないウィルス数で感染が成立するとみられています。肺胞組織の健全性が損なわれている場合はさらに感染率が上がります。コロナに限らず、肺への感染は急速に症状が進みます。注意すべきはこの点です。肺に到達するような微粒子をどう防止するかです。

0.1mmオーダーの飛沫粒子は飛散中の乾燥でマイクロメートルサイズの微粒子になります。乾燥を左右するのは主に湿度で、室温 15-25℃ では、75% 以上の湿度があれば微粒子化までに5秒程かかります。なので飛沫を吸い込んだとしても、微粒子状態ではないので鼻腔で留まるだろうというものです。もちろん鼻呼吸していればですよ。湿度75%というのは東京では6月から10月頃の気候です。体感的には季節風が南風に変わるゴールデンウィークあたりから変化が表われるのではないかとみていますまたアンブロキソールという薬が肺・気管支粘膜保護に役立ちます。高齢の方は医師にご相談下さい生体防御因子群の分泌を促進する塩酸アンブロキソールの 抗インフルエンザ効果」。

飛沫乾燥時間見積(湿度75%、飛散速度3m/s)
縦軸:時間(秒)、横軸:気温(℃)

 飛沫乾燥時間見積(気温20℃、飛散速度3m/s)
縦軸:時間(秒)、横軸:湿度(%)



今年の夏は、換気対策で部屋の空気を入れ替えながらのエアコン使用でしょうか。換気とともに亜熱帯の湿気が部屋に入ってきますが、ドライ運転はしない方がいいですね。蒸し蒸ししたオフィスにいるくらいなら自宅で快適にしていたい訳で、テレワークが定着してしまいそうです。

テレワークは組織を疎結合化し瞬発力発揮に弱くなります。事情はどこも同じで慣れてきたのか、鈍くても文句あまり言われません。一方、自律的で集中力を持続させやすいというメリットは大きいです。こんな騒ぎの最中でもシステムの仕事は減りませんし、生産性も下がっていないようです。テレワーク向きの仕事だったということもあるのでしょうが、AI系は加速している感じもします。システムは人の仕事を機械に置き換えることを目標とするものなので、この勢いで進んだらコロナ騒ぎが落ち着いた後も一部雇用は永久に戻らないでしょう。
機動性、瞬発力を取柄とした人・組織は相対的に順位を下げ、鈍だが、その人・その組織にしかアウトプットできない仕事がニッチを広げていきそうです。
図らずも、社会進化の真っただ中に居合わせてしまったようです。

永島志津夫

追記
 風疹患者数、川崎病患者数が半分程度に減っているようです。予防衛生習慣が広くこのまま定着してくれたら、まさにティールです。